
西奈彌羽黒神社の例大祭である村上大祭では、御神輿が町中を巡行します。
馬は古くから神様が乗られる神聖な存在でもあります。氏子の住まう町内を巡ることで、その土地の安寧や五穀豊穣をもたらす大切な儀礼です。
さらに、馬に関わる人々や地域で生業を営む事業者が御神馬を奉献して、繁栄と安全への思いをひとつにするという、奉賛の伝統も受け継がれています。
一度は途絶えた御神馬を復活
西奈彌羽黒神社の御神輿に続く御神馬の多くは農耕馬でした。1965年頃から農機具の普及、機械化が進むと村上地域一帯で農耕馬の頭数が激減し、調達が困難となり1967年(昭和42年)を最後に途絶えてしまっていました。
2001年(平成13年)に内親王敬宮愛子さまがお生まれになったことを祝した御神馬の奉納をきっかけに、2002年(平成14年)に2頭で巡行する吉事にも恵まれましたが、歴史ある祭礼に御神馬の不在が続くことを憂慮し、復活を果たすべく活動しました。
故・瀧波重兵衛氏(九重園八代目)が福島県から馬を手配するなどの尽力や、江見宮司のお力添えもいただき、2013年(平成25年)に2頭の御神馬で復活。御神馬奉賛会を組織することが叶いました。
運営体制を整備して次世代へ
馬は環境に敏感な動物のため、様々な刺激のある町中を巡行できる馬は限られています。馬はひとたび興奮しはじめるとものすごい力のため、なだめるのも大変です。
お陰様で御神馬の手配は山形県上山市の乗馬クラブ「ゼンライディングクラブ」様のご協力により、大会等で人に馴れている馬たち計7〜12頭で安定的な運営が可能となりました。
奉賛会では運営のため、奉献主や協賛主を募ったり、関係財団に支援を願い出たりと、財政基盤の形成に切磋しています。

川上 伊登志 会長
子どもの頃からなぜか馬が好きでした。理由はわかりません。25歳の時から週末を利用して新発田市の乗馬クラブに通うようになり、そこで知り合った方から「ご先祖様のことを調べてみなさい。馬と関わった人がいる可能性がある」と聞き、先祖をたどりました。
川上家には思い当たるような人物はなし。しかし、母方の祖父が馬好きで3頭飼い、農耕に用いていたとわかりとても驚きました。さらにその祖父は、近衛師団の騎馬連隊に所属していたことを知ることができました。
この頃から私の夢は、馬と一緒に生活すること、となりました。
2015年(平成27年)には長野県佐久市の牧場まで馬を求めて行き、3歳のラビィに一目惚れして家族となることができました。ラビィも御神馬として、巡行を務めさせていただいています。
使命感よりも充実の共有を大切に
御神馬奉賛会の今後の展望は、継続することに尽きます。
昔から変わらぬ巡行をはじめ、あらゆる伝統、文化、歴史が継続していくためには、健全な財政基盤と人材育成が不可欠です。
かつては180頭もの御神馬が参加し、7月7日の朝、羽黒さまを出発した御神馬の先頭馬が片町の庚申堂で休息を取る時、後方馬はまだ神社を出ていなかった、という話があります。
農耕馬が多かったこと、自分の馬が御神馬となることを名誉だと思うたくさんの人心が集まっていた様子がうかがい知れます。
私自身、羽黒さまからご加護をいただいている実感を得ているから心の中にぶれないものがあります。使命感に迫られるように祭りに参加するだけでなく、充実した時間をたくさんの人と共有する心情を大切にしたいと思います。
DATA
西奈彌羽黒神社御神馬奉賛会
会長 川上 伊登志
設立 2013年(平成25年)
会員数 約30人 役員7人
